宇久田税理士事務所発行の事務所通信 とらい&GROW435号(2024年7月)

相続とは相続税の問題だけではない

近年、相続に関する相談が格段に増えた。それは家族に対する考え方の変遷とともに、相続とはつながりではなく、個々に断片的にとらえる権利としてのものに変質してきた。その中心は相続税のとらえ方に表れる。

「うちの場合、相続税はいくら位になりますか?」まずここから入るのが一般的だ。
まず総財産価額を算出し(借入金等があれば差し引いて)、次に法定相続分で取得したものとして税率を掛けて算出する。総財産が確定すると自動的に計算される。

相続は機械的に計算される部分と相続人それぞれの思いが入り組む部分がある。
それは相続人それぞれの生い立ち、親への思いが交錯している。

「相続人」間での分割協議で最も重要なポイントは、「目いっぱい要求せず、少々控えめに。」だ。この姿勢が温かい相続になるか否かだと思う。
揉める相続はその相続の代では終わらず、ずっと続く。子孫の代まで。

一方、非常にスムーズに進み完結するケースも多々ある。不思議なくらい緩やかに終わる相続の決め手のひとつに、亡くなられた父が普段から「相続人」全員を前にして常々言っていたこと(遺言がなくても)。これは仲の良い兄弟の分割協議が穏やかに進む。

相続は亡くなられた方の総決算で子孫につなぐ大仕事だ。その後の家系の盛衰を決するとも言える。その決め手は「仲良く」が一番だ。

当方でもそれこそたくさんの相続事案がある。テクニックの面もあるが、まずは「次につなぐ」を大切にして参りましょう。

(宇久田 進治)